はやめ南人情ネットワーク 汐待 律子さん




昭和14年立花町(現・八女市)生まれ。4人姉妹。父親が「女性は家を守らないといけない。」という考えであったため、幼い頃から家事に慣れるべく、姉妹で朝餉も作っていた。父親は、「80%の人生でちょうどよい。20%は社会の世話にならないといけない日が来るからそれに備え蓄えをしておけ。」と度々口にしていた。その時はよく分からなかったものの、後になって思えば、「いずれ老いれば人様に世話になるのだから、若いうちに社会貢献をしておきなさい。」と理解することができた。
結婚を機に、50年ほど前から大牟田市に居住。専業主婦のかたわら、大牟田市少年センターの指導員、保護司、行政相談員、民生委員などを歴任してきた。また、「家庭を守る」ことも怠らず、家族の健康のため料理教室にも通い、調理師免許を取得するまでにもなった。


「全国の10年先を進んでいる」と言われるほど高齢化が進む大牟田市。大牟田市に住み始めた頃は、まだ「介護は家族でするべき」という考えが根強かった。このため、家族の介護を行っている方は、手助けを言い出すこともできず、一人で抱え込んでしまっていた。肉体的にも精神的にも疲弊している方が多く、民生委員をしている時、共倒れとならないか心配でならなかった。
この経験から「もっと楽に、当事者を地域の中で支えていこう」と思い、認知症と家族を地域で支える活動「はやめ南人情ネットワーク」をスタート(H16.2.22)。モットーは、「1人の100歩より100人の1歩のまちづくりを」。一人で介護を抱え込まないようにするため、地域の見守りネットワークを構築した。
このネットワークは、地区で徘徊者が出た場合、情報を流し地区のみんなで発見しようというもの。これまで徘徊者は家族だけで探していたけれど、地区のみんなでサポートをしてもらうことができて、家族にとっては大きな安心感にもつながった。また広範囲にわたり探してもらえることから、徘徊者の早期の発見にもつながった。
このネットワークは、まずは自分の居住校区である駿馬(はやめ)南(みなみ)地区からスタートさせた。活動を進めていくにつれ、徘徊者が発見されるのは、必ずしも校区内に限らないことがわかり、ネットワークの範囲拡大を市役所に提案。これが認められ、平成19年度から全23校区のうち7校区に見守りネットワークが拡大された。また、この取組みに賛同する方も徐々に増えてきて、平成26年度には大牟田市内の全校区に拡大。今では、大牟田市全域で徘徊者を見守ることができている。また、このネットワークへの賛同者は、元気な高齢者が多く、街を支えてくれている。
毎年9月21日の「世界アルツハイマーデー」には、模擬訓練を実施している。近年は他県から視察に来るほど注目されている。
月に一回の班長会議(11町内)で、地区内の危険個所情報を共有。徘徊者情報が流れる都度、まずは危険個所を確認するよう促している。また、駿馬南地区のすべての高齢者施設には、この見守りネットワークに参加いただいており、いざという時の専門的なサポートをお願いしている。このようにさらなる拡充も図られている。
その他の取組みとしては、長い巻き寿司づくりのイベントを毎年開催し、世代間交流を行っている。今年1月老若男女240名が参加し、前年より1m長い76mを記録した。このイベントは、このネットワークの「1人の100歩より100人の1歩」という考えを基に実施されている。
周りからのサポートだけではない。高齢者に対しては、自ら「自分力」を高めて元気になってもらうよう働きかけている。一人暮らしの高齢者を対象とした催しをする際は、必ず70歳以上の全住民に案内を出すようにしている。出て来てもらうことで、健康状態の把握ができ、未然に病気を防ぐことができる。その結果、校区で10年前は10名だった寝たきりの高齢者が、今では2名と大幅に減少している。
大牟田市は、高齢者が多いけれど、それを悲観的に捉えるのではなく、豊富な時間を持つ高齢者がいるからこそ出来る地域づくりがあると考えたい。また、これまで街を支えてきてくれた高齢者を元気なみんなで支えていけたらと思っている。
 

ネットワークの活動が10年目に入った年に、共同通信社の「地域再生大賞」を受賞した。「校区の困っている人を地域で支えられたら」という一心で活動を続けてきただけなので、受賞の連絡があった時には正直とても驚いた。


地域づくりで一番大事なのは、隣近所で声を掛け合うことです。民生委員として高齢者のゴミ出し代行などの生活支援を懸命にしてきましたが、ある講演会に参加した折、講師の「高齢者は自らの持てる力を出さないと新しい力が宿らない」という言葉が胸を突きました。
高齢者になったら、「持てる力を出して新しい力を宿らせよう」という心持ちで過ごすことが大切でしょう。いくつになっても、全てはやってみないと分かりません。常に会話のある社会に身を置いて、高齢者が元気なまちを作りましょう。何事にも情熱を持って取り組むことが大切だと思っています。


連絡先:はやめ南人情ネットワーク 事務局
           0944-43-1223 (社会福祉法人サンフレンズ 内)