川崎文化・歴史研究会       讃井 明夫さん



 

 76歳。大阪府堺市生まれ。4歳の時、母の郷里川崎町に疎開し、そのまま川崎町に。昭和39年から平成14年まで高等学校で教鞭をとる。退職すぐ、自宅から古文書がでてきたため、その解読に尽力する。このことがきっかけとなり、町内外へ川崎町の文化や歴史を伝える「川崎文化・歴史研究会」を設立。現在は会の事務局長を務める。
 

 4歳から川崎町で育つ。
 大学を卒業し、教員に採用される。採用後は、北九州市に住むが、49歳で川崎町に戻り、福岡市、小郡市や北九州市への勤務も、50キロかけて通う。数学の教員で、現役のころは、歴史とは無関係な生活を送ってきたが、退職後すぐ、妻の実家から古文書が出てきたことで生活が一変する。「江戸時代、妻の先祖が造り酒屋と庄屋だったようです。1700年~1800年代の文書が出てきて、専門家へそれを託しました。古文書には、土地の取引や、酒造株の発行のこと等で、主に商取引に関するもの。古文書の数は、426点にも及び、中には、これまでの川崎町史をひっくりかえす内容のものも出てきたんですよ。」と話す。この古文書は、のちに荒巻家文書として、町文化財に指定される。

 退職後は、旅に行ったり、教職時代を振り返ってみて、これまでのことをまとめてみたりと、のんびり暮らそうと考えていたが、このことがきっかけで、町の文化財専門委員に就任する。「教員のころは、日々自分のことばかりで、目先のことしか考えられませんでした。これからは、もっと視野を広げ、自分たちが住んでいる『川崎町』のことを知り、伝えていきたいと思うようになりました。原動力は、『郷土愛』です。知っているようで知らないふるさと。郷土への愛着を持ってもらえるきっかけづくりができたらと思います。」

 後世につなげていくため、行動を起こす。「歴史や文化の資料を読むばかりでは、なかなか興味を持ってもらえません。そのため『散策会』で、直接史跡を見てもらったり、文化に触れてもらおうと思いました。」このため、平成23年に川崎文化・歴史研究会を設立。発足記念イベントを開催し、80人が参加。翌年2月には、念願の第1回『散策会』を開催。驚くことに、ここまで1年かかっていない。「会の発足のときは、きっと多くの方に共感してもらえると信じ、声をあげました。うれしいことに、今では会員が130人を超えているんですよ。」いつも朗らかでユーモア溢れる讃井さん。日々、多くの方に囲まれていることがうかがえる。

 この日は、20人程度の散策会の日。暑さをしのぐため、バスでの散策会となった。
 バスの中では、資料も見ず、参加者へ自ら説明をする。「江戸時代、ここ川崎町は、一大観光地でした。室町時代に、雪舟和尚の築庭と言われる国指定名勝『魚楽園』をはじめ、明の時代に作成された一切経のうち約3000巻が納められている県文化財『光連寺』、川の浸食によってできる甌穴(おうけつ)を見ることができる『鮎がえり』などには、時のお殿様も楽しめるよう『御成り門』や『御成り座敷』が設けてありました。」
 また、川崎町に魅かれて、移住された方のことも紹介。「川崎町で運営する『川崎町観光りんご園』の管理人は、福島でりんご農家をされていた方です。福島の原子力発電所の事故で、故郷ではりんごが作れなくなり、どこかでまたりんご栽培ができないか探されていました。そのとき、川崎町のことを知り、この地に魅かれ、福島から遠く離れてはいますが、移住することを決断されました。今ではすっかり地元に溶け込まれていて、農家の方へのアドバイスもやっていただいています。栽培に詳しい方に来ていただいて、川崎町のりんごはとびきり美味しいものが収穫されています。」
 この日は5時間半の散策会だったが、「まだまだ御紹介できていないところはたくさんある」とのこと。お奨めの場所は、まだまだたくさんあるようだ。

 この散策会で配布している資料をもとにまとめた本で、『ふるさと知好楽』を出版した。『知好楽』とは論語の言葉で、「人が道を求めて学ぶとき、学ぶことの大切さを知っている者は、知らない者より優れているが、道を好んで学ぶ者には及ばない。だが、好んで学ぶ者さえ、楽しんで学んでいる者には、かなわない。」からきているという。讃井さんはというと、川崎の歴史を自ら感じるため、町の史跡を一つずつ見て回ったり、時には、ここにかつて城があったと伝えられる森に入り、4時間~5時間かけて見て回ったりもするという。まさに『知好楽』。

 「学生の頃は、陸上の選手で、大学2年生の頃に出場した九州大会で、最下位だったんです。これが悔しくて、一年間、人一倍練習しました。そしたら、翌年の春、九州で3位になったんです。それから国体の選手にも選ばれました。君原健二選手(五輪メダリスト)と一緒に練習したこともあるんですよ。」夢中になったら一直線。それは今でも健在で、76歳にして北九州マラソンにエントリーし、42.195キロ完走するという。

 平成27年5月から川崎町の教育長に就任。会のことと公務のことでスケジュールもびっしり埋められていて、お忙しいのではないか、と尋ねると、「忙しいことがいいのです。」と答えた。時間があっという間に過ぎるほど、夢中になるのが良いのだそう。「教育長を辞めたら、そのときは川崎町の観光ガイドに専念します。」笑顔で話していた。

 

 ボランティアでもいいし、何かしら夢中になれるものを是非見つけてください。
 興味があることで時間があっという間に過ぎていくと、毎日充実した気持ちになれます。
 

 連絡先:川崎文化・歴史研究会 
     讃井さん 090-9729-0136